「俺たち親友だもんな」
嬉しそうに笑いあう赤毛の子供とその元使用人を見て、ふと自分にとってあの子供はいったい何なのだろうと考えた。 あの無駄にガの多い伯爵にとっては本人がああ言っているように親友であり、そして憎むべき敵であり愛しい育て児でもあったのだろう。 生真面目な譜歌の詠い手には見守り教える生徒であり、なにより思い人だ。彼らが意識しあっている様子はとても微笑ましいものだ。自分にはとてもできまい。もっとも真似したいとも思わないが。 天然なところのある王女にとっては幼馴染だし、金にうるさい導師守護役にとってはからかいがいのある兄のようなものだろう。いや、もしかしたら弟かもしれない。 では、自分は? 知人?(それだけの存在にするには一緒にいすぎた) 過去の罪の具現?(ではこの感情は罪悪感か?) かつて自分が言ったように友人?(心にもないのに?) それとも彼が言っていたように弟子?(師匠になる気なんかさらさらない) 家族?(血のつながった妹すら捨てた私が?) 恋人?(まさか死霊使いがあんな子供に) ならばなんだ? 私たちの関係は? 私にとってのルークとは? 思索に沈んでいると、いつのまにかガイとルークは話すのをやめていた。 ガイは風呂に行ったらしく、ルークは宿のベッドの上でミュウの耳を引っ張って遊んでいる。 はたから見れば動物虐待もいいとこだが、本人(?)が嬉しそうなので問題はないだろう。 その様子を見て、ルークにとっての自分は何なのだろうと思い立つ。ある程度何を言うか予想がつくが(おそらく仲間とかそんなところだろう)しかし時折この子供は突拍子のないことを言う。 訊ねてみるのも面白いかもしれない。 「ルーク」 「ん〜なんだ?ジェイド」 遊んでいた手を止め、こちらを見る。とても素直だ。 「ルークにとって私は一体なんですか?」 予想外の言葉だったのか、きょとんとした翡翠色の瞳に疑問の色が浮かぶ。 (ああ綺麗だ。) 「なに言ってんだ。ジェイドはジェイドだろ」 まるで空が青いとでも言っているような当然のことを答えるようにルークはそう言い放った。 目からウロコとはまさにこのことだ。思わず笑いがこみ上げる。我慢せずに笑うと、馬鹿にされたと思ったのだろう。 「な・なんだよ!お前が聞いてきたのに笑うんじゃねーよ!!」 「いえいえ。あなたのことを笑ったんじゃありませんよ。悩んでいた自分がおかしかっただけです」 そうだ。何を考えることがある。彼は彼だ。それ以外ではありえない。私にこんな思いをさせるのは、私の心のこの位置にいることができるのは、この子供以外にありえない。ならばカテゴリーで分ける必要なんてない。ただ『ルーク』という名に意味を、想いを込めればいいだけだ。 「ルーク。私にとってもルークはルークですよ」 「はぁ!?当たり前だろ。何だよ、さっきから。わけわかんねぇ!」 そう言って食堂に行ってしまった。どうやら機嫌を損ねたらしい。 残念なことに伝わらなかったようだ。告白したつもりだったのだが。 |