おそらく彼を可愛いなんて言ったら、仲間たちは「嘘だ」と口をそろえて言うだろう。それこそありじごく人のときのように。(もっともあの時も今も俺としては本気なのだが)

 彼の親友である、皇帝陛下ですら「可愛くない方のジェイド」呼ばわりだ。(でもたぶんあの人はジェイドの可愛さを知っていると思う。ブウサギのほうじゃなく。というよりあの人にとって可愛くないものなんてないんじゃないかと思う。きっとその気になればヴァン師匠すら可愛がれるよ、あの人!!)
 でも俺としてはとてもかわいいと思うのだ。なんだかんだいいつつ戦闘中助けてくれるところとか、それで礼を言ったら一瞬黙った後に嫌味を言ってくるところとか(「つんでれ」っていうらしい。)、何気にデッキブラシを気に入っているところとか……。あとはフルーツポンチに卵を追加してクリームパフェにしてくれるあたりなんてかわいくてたまらない!まったくどうして皆気付かないんだろう。こんなにもかわいいっていうのに。


 あぁ!なんかどんどん可愛く思えてきた!!いっそ本人に伝えてしまおうか。いや、でもジェイドは「可愛い」なんて言われたら嫌かもしれない。(きっとそれも可愛いけど)

 ここは「好き」とかにしておこうか。いや、「愛してる」のほうがいいかもしれない。「愛してる」という言葉はこの世で一番大好きな人に使う言葉だってガイが言ってた。ガイはよく俺に言うけど、俺でいいのかな?もっとペールとかじゃなくていいんだろうか。俺もガイに返せたらいいけど、『一番』に言う言葉ならガイには言えない。ガイの事は大好きだけど、一番はジェイドだもん。

 よし!ちょうどジェイドと二人きりだし言おう!
……やっぱ照れるな。いや、がんばれ俺!!

「あ・あのさ、ジェイド」
「なんですか」
 あう、本から目も外してくれない。
「ちょ・ちょっと話があるんだけど、いいかな!?」
 うーん。少しぶっきらぼうな言い方になっちゃった。なんとなく顔を見れなくてうつむいてたら、「ぱたん」と本を閉じる音が聞こえた。
「別にかまいませんが、どうしたんです。厄介ごとはごめんですよ」
 ジェイドが読書をやめて、こっち向いてくれた!
「い・いや、厄介ごとなんかじゃねぇよ。……たぶん」
「ほう」
「うん。あの・さ、俺 ジェイドのこと好きだよ」
「……また、嫌がらせかなんかですか」
「違う!ほんとにそう思ってるから言ってるんだ!!」
「そうですか? まぁ、私もあなたのこと嫌いじゃありませんよ。一応友人ですしね」
「ちがうよ、ジェイド。俺は友人なんかじゃなくて、もっともっとジェイドが好きなんだ。愛してる。愛してるんだよ。ジェイド」

「やめてください」

 バシンと音を立ててジェイドが俺の顔をわしづかむ様にして喋れないようにする。

「いったい何なんですか。厄介ごとはごめんだと言ったでしょう。迷惑です。わたしは、私はあなたのことなんか好きじゃありません。そんな。死霊使いがあなたのような子供を好きになるわけ……」
 ジェイドは動揺しているようだった。その様子すら可愛いと思う俺は末期だろうか。
「ジェイド。おまえが俺のことどう思っているかなんて別に関係ないんだよ。ただ、俺がお前をあい」
 ジェイドの予想外の行動に、その続きを口にすることはできなかった。
「やめろといったはずです。またその口を塞がれたくなかったら黙ってください」

 だめだよ、ジェイド。まるで説得力がない。ジェイドは自分のしたことをまだ理解してないようだ。だって、理解してたらあんな顔してられるはずない。

 唇に手を触れる。俺の顔はきっと今、タコより赤い。なんだか無性に笑いそうになる。



ああ、なんて可愛いひと!!