真っ赤な空を見ただろうか

16p 200円 コピー本


自覚の無い二人が美術館デートする話
限りなく骸ツナに近い気がするツナ骸ツナ
甘酸っぱい感じを目指しました。

『同じものを見ることは出来なくても、――』

↓さんぷる




  日曜が近づくごとに俺は憂鬱だった。なにが悲しくて骸と行かなくてはいけないんだろう。こんなことなら、京子ちゃんは無理でも、ハルやフウ太を誘っておけばよかった。この際、雲雀さんでもいい。いや、やっぱりそれは嫌だ。
 リボーンには大笑いされて、頑張れよなんて親指を立てられるし、本当に最悪だ。ああ、ゆううつだ。憂鬱という字が書けなくても、憂鬱なものは憂鬱なのだ。しかし、だからといって時は止まってはくれないし、ましては巻き戻ったりしてくれない。この世界には謎の道具も謎の赤ん坊もいるけれど、未来から来た猫型ロボットはいないのだ。
 そんなわけで、とうとう日曜が来てしまった。
 この日、綱吉は朝から母親に起こされた。確かに出かけるから起こしてくれとは言ったが、まさか7時に起こされるとは思わなかった。13時の待ち合わせなんだから、そこまで早く起きる必要はない。文句を言うと「あら、だって今日は骸くんとデートなんでしょう?おしゃれしなくちゃ」なんて笑って言った。これが馬鹿にした笑いだったらいっそ良かったのだが、本気で微笑ましそうに笑うから堪らない。
 母さん、あなたの息子が男とデートするのはべつにいいんですか。いや、まずデートじゃないけどね!だからおしゃれもしませんけどね!
 しかし、ベッドに懐く俺を引きずり起こすと、母さんは俺の服を取り出してあれやこれや言い始めた。しかもいつのまにかビアンキまで参加している。「恋する相手のために自分を磨くのは当然のことよ」なんて言ってるけど、まず俺は骸に恋してないからね?リボーンはビアンキの腕の中でにやにやしているし、この家に俺の味方はいない。じーざす!


 結局、白抜きでアルファベットの書かれたオレンジのTシャツに、薄いブルーのジーパンを履いて、俺は待ち合わせの場所へと向かった。休日の並盛駅はそれなりに人が多くて、俺は骸を見つけられるのか心配になりつつ、見つからなかったら帰ってもいいかなぁなんて思ったりもしていた。しかし、俺の心配と期待もむなしく、骸はすぐに見つかった。女の子の視線を辿れば一発だった。
 骸は噴水の前のベンチに座って、周りをちらちらと見渡している。淡いブルーグレイの襟ぐりの大きく開いたTシャツに、ダメージ加工のされたブラックジーンズを合わせている。まるで雑誌の中から飛び出したようなその姿に俺は息を吐いた。
 骸の私服姿を見るのは今日が初めてだ。正直、制服の改造とかで骸の趣味には疑いを持っていたので、普通の格好をしてきてくれて助かった。多少女物っぽい服だが、似合うから問題ないだろう。大きく開いた襟ぐりから覗く鎖骨が色っぽい。無意識に眼をやっていたことに気づいて、俺は頭を振った。一体なにを考えているんだ!
骸はというと、周りを見渡したり時計を見たり立ったり座ったりと落ち着きが無い。俺を探しているんだろうか。そう思うとなんだか胸が熱くなる。それを誤魔化すように、俺は骸の元へと走った。