![]() スピカ 40p 500円 <内容> 週に二回、綱吉は骸と話をする。くだらない話をしていくうちに、親しくなっていく二人。しかし、そんな関係は綱吉が未来から帰還後に一変する……! デレデレツンツンデレ。 骸ツナっぽい気がします。綱吉視点のみでおくる、ツナ→骸の話。 ほのぼのかつシリアス。綱吉が骸について、罪について、これからについてなど、ひたすらあーだこーだ悩む話です。 ※前提設定 ・コミック28巻以降のネタバレあり(後半は未来編終了後のため) ・指輪編〜未来編〜継承編の間には結構期間が開いている ・指輪編で骸は綱吉を「ボンゴレ」呼び ↓さんぷる 『スピカ』サンプル。デレデレツンツンデレ。 ↓デレデレ ちりりっ 首の後ろに何か通ったような違和感。もしくは遠くに聞こえた小さな鈴の音。静電気のようにも悪寒のように耳鳴りのようにも思えた。 言いようのない感覚のそれを俺は予感、もしくは勘と呼んでいる。意地でも超直感ましてやボンゴレオブブラッドなんて名前で呼ぶことはしないけれど、経験的に俺はそれが信頼できるものであることを知っていた。 そんな掠めるような予感があって、俺はいつもの通学路を外れて普段は曲がらない道に入る。 どこか遠くから、微かにテレビの音や子供の笑い声が聞こえた。昼の住宅街は人が居ないわけではないはずなのに人通りはない。未だ高い位置に居る太陽に照らされて、道路にはきらきらと緑の陰が落ちていた。 その下に特徴的な人影を見つけて俺は声を上げた。 「……骸っ」 隣町の制服を着たその背中に向かって走る。名前を呼んだ声は少し掠れた。 「おや」 六道骸が振り向く。独特の髪色が太陽を反射して青く光った。彼が振り向いたので俺は足を止める。骸まではまだ数メートルあった。 「こんにちは、ボンゴレ」 にっこりと微笑む男を、俺は息を整えながら見つめる。穏やかな笑みに、初めて黒曜の森で会ったときを思い出した。 嘘くさい笑顔だと思う。それでもそれが麗しく、優しそうに見えるということは悔しいことに事実だった。面食いの自覚はある。それが優しそうな美人なら更に弱い。美人じゃなくても、優しそうな人はそれだけでなんとなく好意を持ってしまう。多分、最近周りに怖い系の美人が多すぎるせいだ。そしてそのほとんどが中身も怖いのだからトラウマになってもおかしくない。 そんなわけで微笑む姿に内心見惚れながら、俺は骸との距離を測る。 話をするにはまだ遠い。様子を窺いながら近づいていく。話しやすいように。だけど近づきすぎてもいけない。手を伸ばして届かないギリギリの距離を探る。 「こ、こんにちわ。また散歩?」 午後2時過ぎ。以前会ったときもこの時間帯だった。同じ時間同じ曜日。毎週水曜日と金曜日のこの時間に散歩をするのが骸の習慣らしい。先週も会ったし、先々週も会った。 「また散歩です。黒曜からこの辺りまでが、ちょうどいい距離なんですよ」 骸はそう言うけれど、並盛と黒曜は歩いて三十分以上かかる。その距離は運動嫌いの俺からしてみれば、ちょうどいいなんてものではない。感覚の違いか、運動能力の差か、軽く散歩なんて言う骸に俺は苦笑する。 骸とこの辺りで会ったのはもう何度目になるだろう。道は一本向うだったり、こっちだったりと様々だけど、いつもほぼ同じ時間に骸はこの辺りにいた。 水曜日と金曜日、並中は5時間目までしか授業がない。よく分からないけど、職員会議がうんたらって話だ。だから授業が終わると、俺はすぐに学校から帰る。そして通学路の途中、この近くに差し掛かるといつもちりりと予感がするのだ。予感に従って進むといつだってそこには骸がいた。人通りのない道だ。すぐに俺は骸を見つけたし、骸に見つかった。そうなれば、知り合いである以上、無視をするわけにもいかない。 そして、そんな風に何度も会っているうちに、いつしか俺はここで骸と話すようになった。 ↓ツンツン 「マフィアなんかの手を借りる気はないと言っているんですよ」 骸が静かに俺を見る。その瞳に浮かぶのは明確な拒絶だった。 「俺はマフィアになんか……」 「ならないと、まだ言えると思っているんですか」 骸の言葉に俺はようやく違和感の正体に気付いた。骸は俺を名前で呼んだのだ。ボンゴレではなく、沢田綱吉と。 「六道骸に勝ったのは、超直感による相性の問題だと言うこともできたでしょう。ザンザスだって長年の凍結で消耗していたと誤魔化せなくもない。けれど、あの時代で起きたことは違う。沢田綱吉、君はねボンゴレの危機を救ったんですよ。英雄だ。しかも初代の力を継承しているときてる。彼らがそんな君を手放すと、本当に思ってるんですか」 もう逃げられやしないんだと言われた。手に入れるべきではない力を手に入れた恐怖。自分が自分でなくなるような不安。あれは真実だった? でも仕方がないじゃないか。あのときは戦わなければ、力を手に入れなければみんなを守れなかった。 「沢田綱吉、君は未来を見たはずだ。未来で自分が誰であったかも。僕は君を信用しない」 未来の世界で俺は棺桶にいた。十世と記された棺桶の中に。未来の俺は確かにボンゴレ十代目に、マフィアのボスになっていた。 「それでも、それは未来の俺だろう……っ」 未来は確定しているものではないとランボは言っていた。その時その時の選択で、いくつも分岐していて、自分がその中の一つに過ぎないと。ならばこれからの俺の選択で、あの世界とは違う未来になるはずだ。 「じゃあ、今の君の話をしましょう」 「今の、おれ?」 「君は、自分が随分と変わってしまったことを分かっていますか?未来で君は戦うことを選んだ。人を傷つけることを許容した。状況はどうあれそれが君の選択です」 「違うっ俺はみんなを守りたかっただけだ!」 戦いたくなんてなかった。傷つくのも傷つけるのも嫌だった。だから俺は誰かを傷つけることしかできない組織なら、ボンゴレなんてぶっ壊してやると思ったんだ。 「そうですか。では何故白蘭を殺したんですか」 「――っ」 |