友達ごっこ2

72p 700円


<内容>
なんやかんや(前作)があって、友達になった綱吉と骸。
きゃっきゃうふふな親友ライフを送ってきた二人だが、
あるきっかけで骸に彼女ができてしまう。
友達に彼女ができたんだから喜んであげるべきだよね…!
そう思うのに、ついモヤモヤしてしまう綱吉は……。

日常をベースに進む、綱吉自覚編。

※雲雀さんのキャラが崩壊しています。
※骸がリボーンより先に綱吉に会っている関係で、時系列が狂っています。


表紙のイラストは竜々亭のりんね☆さんにお願いしました。

↓さんぷる










ゲームをしていたら、無性にアイスが食べたくなって、俺と骸はコンビニに向かった。
骸とこうして並んで歩くのはちょっと久しぶりだ。
前はよく一緒に帰ったりしたものだが、骸と彼女が付き合いだしてから、そういうこともなくなってしまった。

*****

骸が彼女と付き合うようになって、俺と骸の関係は少し変化した。いや、違う。骸は変わらなかった。変わらない骸を変えたのは俺だ。
「お、六道じゃん。彼女待ってんのか?」
放課後、山本と獄寺君と3人で帰ろうとしていると、校門のところに骸が待っていた。
山本の言葉に思わず駆け寄ろうとした俺の足は止まる。
そうだよ。骸が待っていたのは俺じゃなくて彼女だ。そんなの当たり前じゃないか。
「どうしてですか? 僕は綱吉くんを待ってたんですよ」
きょとんと、さも不思議そうに骸は首を傾げる。
「どうしてって。お前、彼女できたんだろ?」
「恋人ができると、待たなくてはいけないんですか?」
「いけなくはねーけどさぁ」
本気で分かっていない様子の骸に、山本が困ったように言いよどむ。
そのとき獄寺君が口を開いた。
「ここまで来てるのに会いにいかねぇとか論外だろーが」
骸の存在に不機嫌そうに顔を顰めつつも、当たり前のように言い放つ。
「おおっ」
「さすがイタリア人……」
「そ、それほどでもねぇっすよ」
感動のこもった目で見つめると、獄寺君は照れたように笑った。
うん。でもすごいとは思ってるけど、別にほめてないよ。
「むぅ、僕だって育ちはイタリアですよ!」
骸も何を対抗してるの。
「ともかく獄寺の言うとおりだと思うぜ。やっぱ付き合ってんだから彼女と一緒に帰るべきじゃね?」
「そういうもんですかね」
「そうだって! なぁ? ツナ」
山本にそう振られて、俺の心臓はどきりと跳ねる。
いやだ、そう思った。それでも答えなんて一つしか持って居なかった。
だって友達の恋愛は協力するべきだろう?
俺が寂しいからなんて、そんな理由で骸を縛っちゃ駄目だろう?
「そう、だね……」
「そういうもんですか」
面倒臭いと表情に示しながらも、骸は再び門柱に背を預けた。
どうやら待つことにしたらしい。
俺も同意したことなのに、何故か胸が苦しくなる。
「あ、来たみたいだぜ」
昇降口を振り向くと、下駄箱のところに長い髪の少女が見えた。
俺にはそれが彼女なのかどうかは分からなかったが、山本が言うのならそうなのだろう。
「じゃあ、邪魔者は退散するのなー」
「……じゃあね、骸」
顔も見ないまま俺はそう告げると、山本たちを追って歩き出した。
「綱吉くん?」
「六道さん! 嬉しい、待っててくれたんですか」
小さく骸が俺を呼んだ気がしたけれど、後ろを振り向きたくなくて俺はそのまま歩き続けた。

*****

それから骸は毎日のように校門の前に来たけれど、俺とは帰っていない。俺は山本たちと帰ったし、骸は彼女と帰る。骸は相変わらずうちに遊びに来るけれど、その回数もだいぶ減った。
まぁ、ほぼ毎日きていた前がおかしいんだろう。
べつに、さびしくなんて、ない。
「なんか新作でてるかなー」
「先週販売を開始したベルギーチョコアイスは美味しかったですよ」
「……もうチェック済みなんだ?」
「もちろんです」
うん、どや顔すんな。イケメンの無駄遣いめ。残念すぎる。どんだけチョコ好きなんだ。
「俺はカリカリくんのコーラにしようかな。あー、でも復刻メロンソーダもいいよね」
「あー、あれはあれでレトロな感じで良いですよね」
シャリっと固めのメロンには似ても似付かない味の黄緑の中に、バニラアイスのようでどこか駄菓子っぽい白。あの安っぽさがたまらない。そして実際安い。カリカリくんと同じくらい俺の財布に優しい。
そんなことを話しながら、角を曲がろうとしたときだった。
「綱吉くんっ」
骸が堅い声で俺を呼ぶ。どうしたんだろう。
「なに?」
「今日は、あっちのコンビニに行きませんか?」
骸が直進の道を示す。確かにあちらにもコンビニはあるが、だいぶ遠い。そして小さい。
「別にいいけど、あっちだとたぶん骸の言ってた新作はないよ?」
コンビニというよりもコンビニを名乗る酒屋だ。夜の8時には閉まってしまうそこはアイスケースも小さくて、定番のアイスが数種類あるだけだ。
俺のカリカリくんはともかく、骸の新作チョコアイスはまずないだろう。
「い、いいんです…っ」
明らかに良くなさそうだ。めっちゃチョコアイスに後ろ髪惹かれている。
それなのにわざわざあっちのコンビニに行くという骸に内心首を傾げながらも、俺はとりあえず頷いた。
まぁ、たまには骸と散歩というのも悪くないだろう。
だが曲がろうとしていた体をまっすぐ進ませようとしたときバランスが崩れた。
ぐらり、と身体が傾いて転びそうになる。
「綱吉くん!?」
「わっわっわっ」
なんとか踏ん張ろうとケンケンで体制を立て直した。よろけた拍子に角を曲がってしまったけれど、こればっかりは仕方がない。
「っと、セーフ」
なんとか転ばずに済んだ。「へへっ」と笑って振り返って骸にピースサイン向ける。
そのとき視界の端を何かが掠めた。
「綱吉くんっ」
「わぁっ」
腕を強く引っ張られ、骸の足元に転がる。
「「いてて…」」
くそぅ、鼻の頭すった。なんだよ骸の奴、せっかく転ばずに済んだのに。
「ん?」
なんかいま、誰かと声がかぶらなかった?
「うう、いったーい!」
地面に座り込んだまま声のほうに視線を向ければ、小学校低学年くらいの男の子が俺と同じように地面に転がっていた。
「だ、だいじょうぶ!?」
もしかして俺がぶつかってしまったのだろうか。ぶつかった感覚はなかったけれど、転びそうになった俺を避けようとしてということも考えられる。
慌ててかけよる。
しかしその子に手を伸ばそうとした俺を骸が阻んだ。
「骸?」
俺の前に腕を出して、後ろに下がらせる。まるで目の前の子供から庇おうとしてるみたいだ。
「こんなところで何をしているんですか、ランキングフゥ太」
骸が警戒もあらわにそう話しかけた。
え、なに。知り合い?