代替リプレイス

36p 300円 B6


<内容>
ツナムク&ジョスペ前提のツナスペ(?)
輪廻もの。
綱吉は骸を、スペードはジョットを、
生まれ変わった先でその唯一の人を捜し求めながらも、
なかなか出会えないので
その代わりとして一緒に居る綱吉とスペードの話。

――俺達は互いに自分が代わりでしかないことを知っていた。


↓さんぷる




  

「っぐ」
綱吉の朝はうめき声から始まる。
誰の?
もちろん綱吉のだ。
「ツナヨシ、起きなさい。朝食です」
腹の痛みに悶絶しつつ、目をこじ開けようとするのだが、布団は綱吉を放すまいとする。
「うぅー」
痛みと眠気で獣のようなうなり声をあげる。そんな綱吉に第二打が襲った。
「起きなさい」
「ぐえっ」
衝撃で目を開けば、綱吉のぐりぐりと踏みつける男の姿が見えた。明るい青緑の髪をさらりとなびかせ、不機嫌そうに眉をしかめている。まるで人間じゃないみたいに美しい男だ。ただ、なぜかつけている黄色のエプロンがその神聖な雰囲気をぶち壊している。
綱吉は腹の上に乗った白い足首に、このままこれを掴んで放り投げてしまおうかと考えた。片足を放り投げられれば、おそらくこの男はバランスを崩して情けなく倒れるだろう。それはちょっと見てみたい気がした。
しかし、そんな考えを見破ったのか、綱吉が掴む前に足は床に下ろされた。
「ったく、朝から踏みつけるなよ」
「じゃあ、朝じゃなければ踏みつけても構わないのですか?」
「嫌だよ。お前とそんなプレイ」
「そうですねぇ、私も貴方となんてごめんです」
そもそもどちらかと言えばSとMが逆である。
基本的に綱吉に痛みつけられ喜ぶ性癖はない。痛めつけて喜ぶ性癖については、まぁなんというか、なしでもないかも?という感じだ。
スペードについては知らないが、この手の顔の奴はエムだろうと綱吉は勝手に思っている。実際、そう思わざるを得ないようなのろけを何度か聞かされた。
「それよりもっと普通に起こせばいいだろ。蹴るとか踏むとかじゃなくて」
「おや、貴方が普通に起きないのが悪いんでしょう。寝ぼけられるのはもうごめんです」
「あー、あれは悪かったって」
スペードとてはじめからこんな起こし方をしていた訳ではない。はじめは普通に声をかけたり肩を揺すったりして起こしてくれていたのだ。しかし綱吉があまりにも寝起きが悪いものだから、いつしかあんな暴力的な起こし方になってしまったのである。
「それより今日のごはんはなーに?」
 ぴすぴすと鼻を動かせば、パンの焼ける匂いがただよってくる。ふむ、今朝は洋食か。
「卵とハムのホットサンドとポトフ、それとフルーツヨーグルトです」
 ひらりと黄色のエプロンをなびかせて自信満々にスペードが告げる。ふふんと笑った顔にちょっといらっときた。いや、朝食作っておいて貰っている立場だし、顔にはださないけどさ。スペードが綱吉を嫌いなように、綱吉もまたスペードのことが嫌いである。それは出会ったときから変わっていない。態度としては随分と軟化したし、いちゃらぶすることもあるけれど、それでも互いに嫌い同士であることには変わらない。今現在、互い以上に親しい人間は皆無なのだが、同時に互い以上に嫌いな人間も皆無なのである。これはもう、骸とジョットに会えるまで変わることは無いのだろう。似ているのに違うからイラっとする。つまりはそういうことなのだから。
「ほら、冷めるからさっさと起きてください」
 布団から引き剥がされて、綱吉はぼりぼりと頭をかいた。未だに眠気が片足を引きずっているが、振りほどけないほどでもない。
「……んぁ」
 口を大きく開けて欠伸をした後、動物がするように首を振った。
「ん、おはよう。スペード」
「おはようございます、ツナヨシ」
 スペードに挨拶して、そして心の中で骸にも挨拶する。
(おはよう、骸。今日こそお前に会えますように)
 スペードもまたジョットに対して同じようなことをしているのだろうか、不自然な沈黙の中、綱吉たちは頬を寄せ合う。
「さて、朝ごはんにしようか」