推測ではやはりNOです

400円 48P


ある日突然、骸の声が出なくなった!
なんで?どうして?あたふたと心配する綱吉を他所に骸は意外と冷静で・・・?
無自覚×無自覚な二人が恋を自覚するまでの話。
たぶんラブコメ。

リアルマフィア3で発行
初のオフセット本。表紙は単色墨刷り。

サンプル↓




 「――いいですか沢田綱吉。僕は・・・・・・」
 流れるような小言を左から右に聞き流していた俺は、突如として訪れた沈黙にすぐ後ろを歩いていたはずの男を振り返った。
「骸?」
 いつの間に立ち止まっていたのか、骸との距離は数メートル離れている。何故か口をぱくぱくさせて骸は驚いたような顔をしていた。まるで水中の金魚や鯉のようにただ上下の唇をくっつけては離している。
「なにやってんの?」
 俺の存在自体失念していたのか、そこで初めて俺の存在を思い出したように骸の瞳が俺を捉えた。
「む、うわっ!?」
 いきなり距離を詰められ、それにどきりとする間もなく肩をつかまれる。
「な、なんだよ」
 ていうか顔が、顔が近い!珍しく真剣な眼差しに俺は固まった。
うう心臓がうるさい。落ち着け俺。骸の顔が近いからってなんだ!ほら、落ち着いて。・・・・・・こいつまつ毛長いなぁ。って違う違う!
 俺が一人パニクっていることに気づいているのか、いないのか。骸の指が自らの唇を指す。そしてゆっくりと唇を動かした。
 ん?唇読めってこと?そんなこと言われたって(いや、『言って』はないけど)リボーンじゃあるまいし、できるわけない。
「なんだよ。言いたいことがあるなら口で言えよ」
 なるべく骸から距離を取って心臓を落ち着かせながらそう言うと、骸の顔が固まった。あ、やばい?
「ちょっ」
 骸はその整った顔でにっこりと笑うと俺の頬に手を当てる。そして思いっきり引っ張った。
「いぃいいいいっっ!?」
 容赦なく俺の頬を引き伸ばしながら骸は再び口をぱくぱくさせている。相変わらず音声はない。ようやく何かがおかしい事に気付いた。痛みに耐えつつ、叫ぶ。
(骸!お前、声!?)
「ふ、ふくっろ!ひょまえほえ!」
 引っ張られているせいでまともな言葉になっていなかったが、言いたいことは伝わったらしい。チッと舌打ちして手を放した。