あっちへいけ 近づかないで欲しかった。どうしてこんなことになったのだろう。 嗚呼、こんなことになるなら出会いたくなどなかった。 聞こえてくる足音に耳を塞ぎたくなる。聞こえなくなったところで彼がそこに居ること に変わりなど無いのに。 「骸。こっちにおいで」 ああ、行きたい。行きたい。行きたくない。呼ばないで。もう孤独にはなりたくない。 「骸、お前が来ないならこっちから行くよ?」 その言葉にとっさに後ずさるがすでに背中には壁。逃げ場は無い。 「君を愛したら、僕はきっと寂しくなる。一人で生きていけなくなる。そして君は僕をおいて逝くんだ。そんなのはごめんだ。だから―」 なんてことだ。それでも伸ばされた手を振りほどけない。 (ツナムク) ある晴れた日に (気付いて、しまった) 目の前をひらりと薄紅が舞った。当然だ。桜の下に居るのだから。 それでもつい見惚れてしまった。 ――違う。見惚れたのは桜じゃない。本来なら美しいなんていいがたい廃墟の中の記憶。 ひらひらひらひら桜が降る。 利用した身でいうことじゃないが、彼の病が治ってよかったと思う。だって幻ですらあんなに似合っていた。 似合っていた?あんな男に?桜が?何を気持ち悪いことを考えているんだ僕は。これじゃあまるで― *** 「はい、プレゼントです」 「いらないよ。桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿って知らないの?君、馬鹿?」 眉をしかめる雲雀に折り取った桜の枝を無理矢理手渡す。ああ、やっぱり似合う。 「ねえ、どうやら僕は君のことが好きみたいですよ」 「・・・ほんとに馬鹿だったんだ」 (雲雀さんハピバで初ヒバムク) 積み上げて崩れるまで 「なあ、骸」 「なんですか?」 国語の教科書を読んでいたと思ったら名前を呼ばれた。読めない漢字でもあったのだろうかと本から目を離すと、じっとこちらを見つめる二対の目があった。 「愛してる」 思わず綱吉の額に手を当てる。どうやら熱があるわけではなさそうだ。勉強をみてあげていたらいきなりの愛の告白。普段を考えたら疑うのはしかたがないだろう。 「べつに熱はないよ」 「じゃあいきなりどうしたんですか」 「ゲシュタルト崩壊って文字じゃなくても起こるのかと思って」 「ゲシュタルト崩壊ってずっと同じ文字を書き続けてるとだんだん意味がわからなくなってくるっていうあれですよね?」 「そうそれ。教科書に載っててさぁ」 彼の持つ教科書に目をやる。国語の教科書にそんなことが書いてあるのだろうか。骸も同じ教科書を使っているが、開いたことなんてなかったからわからなかった。 「だから、愛してる」 「崩壊するまで言うつもりなんですか?」 「うん。愛してる」 「たぶん起こりませんよ?」 「起こるかもしれないじゃないか」 にっと笑った顔で単に勉強に飽きたからこんなことを言い出したのだと分かった。でも構わない。 「じゃあ二人で崩壊させましょうか」 そして数え切れないほどの愛を君に (珍しく甘いツナムク) me me she 『さよなら』 そう告げられたのは随分前なのにどうして僕は今も忘れられないんだろう。僕を拾うだけ拾っておいて、救うだけ救っておいて、最後には捨てたくせに。捨てられたくせにどうして嫌いになれないんだ。 ずっと一緒に居ると約束してくれたのに、僕を置いて逝ってしまった。 『ごめんね。むくろ。俺のことを忘れていいから恨んでいいから。だから生きて』 瞼を閉じれば君が映る。消し去りたいと思っても消えてなどくれない。謝るぐらいなら教えて欲しかった。どうすれば忘れられるのか、嫌いになれるのか、君なしで生きていけるのか。 「君が約束を破るなら僕がそこにいきます。次でいつまでも待ってます」 銃をこめかみにあてる。嗚呼、空が綺麗だ。 「さよならにはしない」 そして引き金をひく。 どこかで君が泣いてる気がした。(どうして?) (ツナムク) |
楽しかったです。