黒い箱の中に居る男を見つめて俺は首を傾げた。
 これは一体何だろう。確かにこれは六道骸の容姿をしているけれど、これが骸だとしたならばこんなところで寝る趣味はないはずだ。それとも俺の知らない間にこんな狭いところで寝る趣味でもできたのだろうか。
 ああ、でもこんな狭くっちゃ俺が一緒に眠ることはできないなぁ。じゃあ、やっぱりちゃんとベッドの上で寝てもらわなくちゃ。

「骸、起きて。こんな所で寝たら風邪を引くよ」

 揺さぶり起こそうと真白の花に囲まれた骸の方に手を伸ばす。まったく誰だろう。この花を用意したのは。確かにこいつは顔だけはいいからこういう花も似合うけれど、性格を考えたらこんな純粋そうな花なんて似合わないのに。

「むくろ」

 指に触れた頬のあまりの冷たさに世界が崩れる感覚がした。
 嘘だろう?確かに骸の体温は低いけれど、これじゃあまるで。ああ、駄目だ。何かが零れていく。骸。だってそんなのありえない。ねぇなんで皆うつむいているの?やめてくれ。零れ落ちてしまう。崩れていく音が聞こえるんだ。だってこんなの嘘だ。


 六道骸が死ぬなんてありえないじゃないか!


「むくろ・・・!」
『なんですか、綱吉君』

 聞きなれた声に振り向くとそこに骸が居た。ああ、ほれ見たことか。やっぱり骸は死んでなんかいないじゃないか。
 いつものように緩やかに口角をあげてにやにや笑う骸の存在に俺も笑う。透けた骸の身体の向こうで獄寺君が訝しげな表情をしているのが見えた。




2008/12/24