小さな焔とカボチャの日



 部屋の隅でルゥがかぼちゃと闘っている。大きなオレンジ色のかぼちゃだ。陛下にそそのかされたらしいルゥがハロウィンをやりたがったので買い与えてみたのだがやはり大きすぎたかもしれない。抱えるほどある。しかし頭にかぶるのだったらあのくらいの大きさは必要だろう。
 不器用な手つきでかぼちゃの中身が取り出されていく。オレンジ色のかぼちゃの中身はやっぱりオレンジ色だった。がりがりと削りだされていく。私は用意した皿にそれが山になっていく様子を眺めている。疲れないのだろうか。もう一時間ほど削り続けている。子供の集中力は侮れない。

 がりがりがりがり。

 明日はあれをかぶって知り合いのところを周るのだろう。まだ一人で出歩かせるには不安なので私も付いていかねばならない。休暇を取っておいてよかった。そういえばジャックオランタンならばマントも必要だと思うのだがどうなのだろう。ああいう物は何処で手に入るのだろうか。それとも自分で作るのか。ああ、たしか黒い布ならば棚か何処かにあったはずだ。


 がりがりがりがり。

 かぼちゃが削られていく。オレンジが増えていく。

「ルゥ」

 がりがりがりがり。
 一心不乱にかぼちゃを削り続けている。気付かない。

「ルゥ」

 がりがりが・・・。
 かぼちゃを削る手が止まる。

「なーにーじぇーど?」

 スプーンを握り締めてルゥがこちらを見上げてくる。

「かぼちゃスープとかぼちゃパイどちらがいいですか」

 そう尋ねれば高らかにパイ!という答えが返ってきた。かぼちゃパイはどうやって作るのだっただろうか。

novel



2007/10/31