小さな焔とお年玉


「じぇーどっおとしだま、ちょーだい?」

 新年早々の軍の行事を終えて帰ると、ルゥがそう言って小さな両手を広げて待っていた。

「おとしだま?」

 何のことか分からなくて聞き返すと、ルゥは詰まりながらも一生懸命説明する。

「ええと、つまりお年玉とは新年に子供が貰うものなんですね?」

 説明された内容をまとめ、確認するとルゥはぱあっと笑って頷いた。

「ルゥ?一体それは誰から聞いたんですか?」

 昨日までそんなことは知らなかったはずだ。一体誰が吹き込んだのか。といっても予想は出来ているのだが。

「ぴおに!ぴおにはがいらるでぃあにきいたんだって!」

「へぇそうですか。あの人は確か今日は式典で忙しいはずなんですがねぇ」

 笑みを浮かべたこめかみがぴくぴく震える。一体何をしているのだろうかあの馬鹿皇帝は。

「じぇーど、おとしだまちょーだい?」

 再び伸ばされた手に途方に暮れる。やりたいのは山々だがお年玉が何なのかが分からない。分かったのは新年に子供に与えるということだけだ。子供に与えるのだから菓子か何かだろうか。

「ルゥ。すいませんが、私はお年玉というものが何か分からないので教えていただけますか?」

「んっとね、こんなのにはいっているんだって!」

 そう言ってルゥが取り出したのは白い小さな封筒だった。・・・封筒。こんなものに入る菓子は限られているだろう。ということは菓子ではないのか。封筒ということは手紙だろうか。しかしわざわざ新年に手紙を貰ってどうするのだろう。まるで分からない。しかしルゥの手は伸ばされたまま。目は期待に輝いている。裏切られるなんて想像もしてない、信じきった視線が痛い。





「ほうほう、それでお前は何をやったんだ?」

 楽しそうに笑う幼馴染を睨みつける。そもそも誰のせいだと思っているのだ。しかしこの男にそう言っても仕方ないことは知っているので言及はしない。あとでガイを苛めよう。

「封筒に海苔を入れて渡しました。喜んでいましたよ」
「ノリ?あのパリパリの?」

 驚いたように言うのがうっとおしい。仕方がないではないか。お年玉が何かなど知らないのだから。

「あのパリパリのご飯に乗せる海苔です」

 そう繰り返すとピオニーは声をあげて笑った。いい加減に出てってはくれないだろうか。今更だが此処は私の執務室なのだが。

「道理でガイラルディアがやったお年玉を貰わないはずだ。1万ガルドじゃ足りなかったのかと落ち込んでいたぞ」

 なるほど。お年玉とは金のことだったのか。それにしてもいい気味だ。

「それじゃあ欲しがらないでしょうね。金には苦労させてませんし、そもそも金銭というものをまだ理解していないようですから」
「だよなあ。・・・ああ、ジェイド。ルゥに俺からもお年玉をやるから楽しみにしておくように言っておいてくれ」

 その言葉に嫌な予感がして私はピオニーのことを無視して仕事を続けた。数日後、家に届いた大量の海苔を譜術で燃やし尽くしたのは言うまでもない。

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