_もしも気づかなかったならお前は今もそばに居ただろうか そんなことを思った自分に気づいてガーターは眉をひそめた。 ばかばかしいと思う。どちらにしろソリッド・レコードの再生時間はもう残ってはいなかったのだから。きっとこんなことを思うのはあいつ、長身の魔族がいうところのストーカーからこのところ手紙がきていないせいだ。この前の手紙が最後の一通だったらどうしようと不安になる。いつ手紙を書いているかは知らないが、彼がどうなったのかは分かっている。あれが最後の手紙だったら、あの手紙のあとすぐに投獄されたのだとしたら、そう思うとじっとしていられなくなる。遠い過去にすでに起こってしまったことなのだから自分にはどうしようもないのに。 無事を確かめようにも、過去に手紙を送ることはできないので手紙はいつも一方通行だ。 「まるでマジックミラーみたいザマス…」 自分の口から漏れた言葉に、なんて的を射た表現だろうと苦笑が浮かぶ。 「早く手紙よこせ、馬鹿…」 ため息とともにつぶやいた言葉は黄昏の闇に溶けていった。 手紙はまだやってこない。 |