チョコと制服と仮装行列



 「Trick or Treat !」

 ばたん。執務室の扉が乱暴に開けられる。あの扉ももうすぐ寿命だろうか。ここには扉に気を使わない人間が多すぎる。

「はいはい」

 ぱしっと菓子の入った袋を骸に向かって投げつける。中身はチョコレートだ。ドラキュラの格好をした骸はそれを受け取るとにっこりと笑う。骸の後ろには狼男の犬とミイラ姿の千種がいる。そして少し遅れて悪魔の羽を付けたクロームが走ってくる。ああ、可愛いなぁ。こうも会う人会う人男ばかりだと恋愛感情関係なく女の子は癒しだ。犬と千種とクロームには後で手渡しでお菓子を渡そう。

「で、骸。お前は何を持ってきたわけ?言っておくけど魔女もセーラー服もチャイナドレスもネコ耳もしないからな」

 先ほどまで部下に持ち込まれた様々な衣装を思い出す。どうしてこうもイロモノばかりなのか。男にそんなものを着せて何が楽しいんだ。女の子に着せたほうが目に優しいじゃないか。ていうかなんでセーラー服の裾に風紀の文字があるんだよ。まだ俺を風紀委員にするの諦めてなかったんですか雲雀さん。

「違いますよそんなんじゃありません。ほら千種」

 そう促すと千種が紙袋を取り出す。そこに何が入っているのか考えるだけで頭が痛くなりそうだ。

「じゃじゃーん」

 そう言って出されたのは緑色の服。

「黒曜の制服・・・?」

 見覚えのあるそれは黒曜中の制服だった。二十歳をとうに過ぎた男が着るのはちょっと痛いかもしれないが、今までの衣装から比べるとうんとマシだ。

「どうぞこれを着てくださいな!」
「まあ、お前にしちゃまとも、かな?」

 正直、中高とブレザーだったから学ランっ憧れていたので少し嬉しい。渡された学ランを羽織ってみるとちょっと大きいようだ。裾が少し余る。これは骸のだろうか。だとしたら少し悔しい気もする。中学のときに比べれば大分背も伸びたつもりだったが、まだ中学のときの骸に追いついていないということだろうか。目の前の骸はさら伸びているのがまた悔しさを増す。くそ、どうして俺の周りはみんな背が高い奴ばっかりなんだよ。裾を掴んでみたりしていると視線を感じた。視線に沿って骸を見るとぐいっと親指を突き出された。

「なに?」
「ぐっじょぶ!グッジョブです綱吉君!」

 満面の笑みを浮かべてそんなことを言われる。変態。制服マニア。どちらも今更だ。声を飲み込んで溜め息を吐くと、ボス可愛い・・・なんていうクロームの声が聞こえた。なんだか最近クロームも骸に毒されている気がする。
 ああ、俺の癒しが・・・。

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2007/10/31