「あーすっかりクリスマスですねぇ」
並盛商店街に飾られたイルミネーションを眺めながら骸が呟いた。
俺はというとなんでこいつが隣に居るのだろうかと考えていた。
だって今日はクリスマスだ。聖なる日で、性なる日だ。
周りに居るのはどいつもこいつもカップルだらけで、なんで俺の隣にはこいつなのだろう。
「リア充爆発しろ」
「!?」
俺がぼそりと呟くと骸が驚いたように肩を揺らした。なんとなくそのことに満足して、俺は話題を変えて骸に話しかけた。
「クリスマスかぁ。ちっちゃい頃はサンタとか楽しかったなぁ。枕元に手紙とか置いちゃったりしてさ。
骸はそういうのあった?」
『サンタさんへ』と書いたアレは今思えば明らかに『せソ月ちんへ』だった。
「いえ、ありません」
「……あ、ごめん。おれ…」
俺の問いに骸はあっさりと答えた。ああ、どうして俺はいつも不用意なんだろう。骸の過去を考えれば、サンタさんなんてありえないのに。
ぎゅっと胸が苦しくなって俺は骸に謝ることしか出来ない。
それにそもそも骸ならばサンタなんて鼻で笑い飛ばしそうだ。
「僕みたいな悪い子のところにサンタクロースがきてくれるはずないでしょう?」
再度謝ろうとしていた俺は骸の言葉に耳を疑った。
「……はい?」
「だからサンタクロースは良い子のところに来るんでしょう?君は良い子だったんですね」
サンタクロースは良い子のところに来る。うん、そうだ。
でもそれは親とかが子供を良い子にするために言うのであって……。
え、あれ?うん?
「あ、あの。間違ってたらごめんな。もしかして骸ってばサンタ信じちゃってたり……」
「え?」
「あはは、ごめん。さすがにそんなわけないか。中学生になってまでサンタ信じている奴なんていないよな!俺ですら小6で気づいたし」
まさかそんなはずもない。あの六道骸がサンタクロースを信じているなんて。まさかの勘違いになんだか恥ずかしくなってきた。
骸にもきっと笑われるか怒られるだろう。
しかし俺の考えとは裏腹に骸はその白い肌をさっと赤く染めた。
「……っ!」
「骸?どうかした?」
「……すっするわけないじゃないですか!サ、サンタなんて信じるわけないでしょう!馬鹿じゃないですか!?」
「え、あ。うん。だからごめんって」
「きょ、きょうはもう失礼します!」
顔を真っ赤に染めて去っていく骸を俺は呆然と見送った。
え、まじで?
そして俺は財布と貯金箱の中身について考える。今から走って買いに行けば間に合うだろうか。
「問題はどうやってあいつの枕元に近寄るかだよなぁ。……盛るか?」
別に背は高くないし、恋人でもないけれどサンタクロースになってみようか。
だってサンタを信じる良い子のところに、サンタクロースは来るものなのだから!




恋人がサンタクロース



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2011/10/28 再UP