「よぉ、ツナ。そこで骸と会ったぜ。アイツが此処に来るなんて久々じゃね?」 書類の束を片手に中学来の友人の部屋を訪ねると、友人は執務用の机ではなく、大きなソファに腰を掛けていた。どうやら休憩中らしい。そこで俺も向かいのソファに腰を下ろして雑談がてら、さっき久しぶりに会った同僚の話を振る。 「そうでもないよ。長居しないだけで顔は以外とちょくちょくだしてる」 「そうなのか。まぁアイツはツナに会いに来てるようなもんだもんな。俺らにゃ顔出さないか。しっかし相変わらずラブラブなのなー」 苦笑するように言ったツナが羨ましくて、にやにやと笑ってからかってみる。ボンゴレ十代目とその霧の守護者が恋人関係にあることはみんな知っている。公然の秘密ってやつだ。 しかし俺の言葉にツナは目をパチパチと瞬かせ、そしてどこか薄暗く笑った。 「ねぇ、山本。本当のことを教えてあげようか」 「ん?」 目の下に隈を浮かべて自嘲するようにツナが笑う。 「あのね、みんな勘違いしているけど、本当は俺と骸は愛し合ってなんかいないんだよ」 「またまたぁー、照れんなって。全然そうは見えないぜ?」 ツナの言葉を照れ隠しと受け止めて俺は笑った。それを受けてツナもやはり薄暗く笑う。 「違うよ。俺はただ骸を許したくて、骸はただ許されたかっただけ。でも、それを行うことは立場やプライドが許さなかった。だから理由が必要だった。誰もが仕方ないと言ってくれるような強い理由が」 「それが愛ってか?」 吐き出すようなツナの言葉を俺は軽く聞き流す。獄寺あたりに怒られそうだが、真剣に聞く方が馬鹿を見る。ツナもそれを分かっているようで、もしかしたら分かっているから俺に話したのかもしれない。 「だってそう言えばみんな納得してくれたんだ。愛し合っていることにすれば、俺は六道骸を守護者に置けるし、骸は俺の守護者で居られる。マフィアだとかそんなの気にせずに傍にいられるんだ」 目に黒い隈を浮かべて、部屋に白い書類を積んで、そんな風に笑うツナを見て、「ああ、疲れてんななぁ」と思う。 「愛なんてね、ただの免罪符だよ。俺たちは許し合ってそばに居たいだけ。愛してなんかいない。愛なんかじゃないんだよ」 「それでも、傍にいたいと願うなら。それは愛だと俺は思うぜ?」 俺がそう言うと、ツナは「そうかな。そうかも」と言って、ふんにゃりといつものように笑った。 「そうだよ」 逆に俺は疲れを感じてため息混じりに笑う。ああ、いつだって他人のノロケ話は頭が痛い。 だいたいツナと骸が愛し合っていないなんて一体誰が信じるというのか。 大っ嫌いな場所にちょくちょく来る程度には愛されているくせに。逢う時間を作るために書類に追われて、追加の書類を持ってきた俺に八つ当たりせずにいられない程度には愛しているくせに。まったく、何より首にそんな赤い痕まで付けてそんなこと言われたって、馬鹿馬鹿しいばかりじゃないか。 あーあー、まったく熱くって涙がでそうだ。 |