そっと頬に触れてくる白く細い手に自分の幼い手を重ねる。浮かんできた感情のままに笑えば、相手も目を細め微笑んでくれた。 「好きだよ、骸」 そう囁き、口付ける。薄く唇を開き上を向き、めるりと入り込んできた舌を受け入れる。口内を蹂躙する熱にくぐもった声が出た。吐息が洩れる。伸びてきた舌に自分の舌を絡ませれば、意を得たとばかりに引きずり込まれた。呼吸が苦しくなって骸の肩にしがみ付くと、そっと一つになっていた熱が離れる。銀の糸が伸びて、切れた。そのことを少し寂しく思う。 「僕も、君の事を、愛していますよ」 腰に手を当てられ、共にゆっくりと後ろに倒れこんだ。いつの間にか背には柔らかな布が敷き詰められている。冷やりとした感触が熱をもった肌に心地良い。そう頬をゆるませれば、俺に圧し掛かるような形になった骸も優しげに笑った。俺よりも体温の低い、冷たい手が服をめくり腹を滑る。冷たいはずなのに触れられたところは裏腹に熱くなっていく。それに思わず吐息が洩れて、俺は骸の首に手を回して抱き寄せた。そんな俺の首に骸はくすくす笑いながら唇を落とす。触れるだけだった唇は鎖骨、胸へと時に吸うようにしながら下っていった。いつの間にかシャツのボタンは全て外されている。その一方で指はしなやかに俺の薄い腹や背中を這っていった。ん、触れられるたびに洩れる声は甘い。 「す、き・・・」 告げた唇はそのまま骸のそれによって閉ざされる。 「僕もですよ」 微かに唇に触れたままそう囁かれる。そして骸の手が俺のズボンのベルトに 「…って、ちょっとまったあああああああ!!!」 そう叫んだ瞬間に白い、霧のようなものが辺りを包み込む。そして晴れたときには骸も、骸に押し倒された俺もいなかった。白い世界に突っ立ったまま、取りあえず服を確認する。よし、シャツのボタンは外れていないしベルトもきちんと締まっている。 「さて・・・、骸!出て来い!いるんだろ!?」 そう何処へというわけではなく声を上げれば、一瞬の間の後、独特の笑い声が辺りを包む。 「あ〜あ、勿体無い。せっかくいいところだったのに」 いつの間にか目の前に現れた骸がそう言いながらニタニタと笑った。無駄に整った顔の中で赤い目がきらめいている。 「明けましておめでとうございます。お邪魔していますよ」 邪魔しているということは、予想通り此処は俺の夢なのだろう。それにしても真っ白とは寂しすぎないか自分。そう思った瞬間に辺りが白い世界から見慣れた俺の部屋に変わる。 「どういうつもりだよ。こんな夢を見せて」 「おや、素敵な初夢だったでしょう?」 そう笑うと骸はさっそく出来たばかりの椅子に腰掛ける。おい、人の部屋の椅子に無断で座るな。というかそもそも勝手に人の夢に入ってくるな。 「悪夢だろ。変態とあんなことする趣味はない」 ベッドに腰掛けると馴染んだ感触が伝わる。どうせ夢ならもっとふわふわにならないかと念じてみたが、相変わらずベッドの堅さはいつもどおりだ。 「くふふ、案外あるんじゃないですか?僕は夢の方向を示しただけ。あの夢を見たのは君ですよ」 「嘘吐くな」 骸が嘘吐きなのはとっくに承知している。承知していても骸はいつだって笑いながら嘘を吐くから騙されることも多いのだが。 「はぁ、もういい。さっさと出てけよ、骸。俺は寝る」 付き合ってられないとばかりに俺はベッドに潜り込んだ。夢の中で寝るというのも変な感じだが、寝られないことはなさそうだった。 「まあ、嘘でもいいですけどね。・・・・・・ねえ、綱吉君知ってます?」 骸の呼びかけに俺は閉じていた目を開く。相変わらず骸はにやにや笑っている。なんだよと睨みつけると、いつもの調子で声をあげて笑った。 「初夢って正夢になるんですよ」 くふふ!そう楽しげに笑う骸に文句を言おうと口を開ける。しかし言葉が出てくる前に骸が言った。 「じゃあ明日、いやもう今日ですね。初詣、今日の二時に迎えに行きますから!」 一方的に告げられた約束にちょっと待てと言おうとした瞬間に再び白い霧が辺りを包み込んだ。そして強制的にフェードアウト。 |