怒鳴られ損の日曜日



骸は浮かれていた。

「ごきげんれすね、むくろさん」
「あたりまえでしょう?だって綱吉君がうちに来てるんですよ!」

いつもは骸が綱吉の家に押しかけてばかりで、綱吉が骸の家に来るのは珍しかった。
しかも泊まりなんて初めてのことだった。
まぁ、単に風呂に入った後に帰っては風邪をひくからなのだが。
その綱吉は現在風呂に入っている。

「くふふ…。ああ、今日は本当にすばらしい日です!綱吉君がうちに来てくれて、しかも来る途中で手を繋いでくれたんですよ!」
「そうですか。良かったですね、骸様」
「ええ。だから千種、犬。綱吉君に失礼のないようにするんですよ。というかいっそ今日は家にいないでください」
「えー。いやれす。そんなことしたら、さむいじゃないれすか」
「さすがにこの時期に外にいるのは危険なのですが、骸様」
「別に千種たちが風邪をひいても問題ありません。綱吉君だったら大変ですけど」

そこまで言ってから、骸は犬が自分の後ろのほうを見ていることに気付いた。

「骸!なんてこというんだよ!!千種たちが可哀想だろ!」

振り向くと、いつの間にか風呂から上がっていた綱吉が立っている。

「綱吉君!?」
「どうしてお前はそうなんだよ!もっと他の人にも優しくなぁ…」
「でも、つなよしくん…」
「でももだってもない!」

綱吉は弁解しようとする骸を無視して、千種たちの方へ向かう。

「千種も犬も別に出て行かなくていいから」

そう言って綱吉はにっこりと笑った。

「ボンゴレ…」

普段、骸の暴言に慣れた千種たちには綱吉の優しさが特に染み入るようだった。

「ところで、千種たちの部屋ってどこ?俺、そこで寝ていいかな。床でいいから」
「ちょ、綱吉君!綱吉君は僕の部屋に…!」
「この寒い中、出てけなんて言う奴と一緒に寝る気はない」
にこにこ笑っているが、綱吉はかなり怒っているようだった。
「ボンゴレ、こっちれす」
「犬!」
「骸様、すいません」
「千種!」
「じゃあ、おやすみ。骸」
「綱吉君―!?」



そうして骸は独り残された。

「どうしてこうなるんですかぁ…」

楽しげな綱吉たちの声がやけに切なく響くようだった。


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