冷たい風に身を竦ませた日曜日



「う〜…。寒い。さむい。さむい」
「寒いって言うから、余計寒くなるんですよ」
「うるさい。言っても、言わなくても寒いものは寒いんだよ。なんとかしろ、馬鹿」
「機嫌悪いですねぇ。なんとかっていっても、抱きしめるぐらいしかできませんよー?」
「抱きしめなくていいから、お前のマフラー寄こせ」
「そんなことしたら、僕が寒いじゃないですか。どうせなら恋人巻きしませんか」
「恋人巻き?」
「長い一つのマフラーをカップルが二人で使うアレです。やりません?」
「ぜってー嫌だ」



あぁ、ほんと寒い。
こんな寒い日は家にこもってこたつでごろごろするのが一番なのに、どうしてこんなことになってるんだ。
まずせっかくの日曜なのに、風呂が壊れた。その上、唯一の暖房器具であるこたつも壊れた。どうしようかと思っていたら、骸が家に来ないかと誘ってきたのだ。はじめは千種や犬もいるからと、遠慮したのだがあまりの寒さに負けた。
というわけで、今は骸の家まで歩いているところなのだが、本当に寒い。しっかり着込んではいるのだが、それでも風が吹くとありえないほど寒い。歯はガチガチ鳴るし、手先は寒さでかじかんでいる。



「ほんと寒い…」

はぁーっと手のひらに息を吹きかける。手袋をして来ればよかったかも知れない。

「綱吉君」

骸が横から話しかけてきたので、なんだよと目で促す。話すのもなんだか面倒くさい。

「手、貸してください」

なんとなく嫌だったが、特に理由もないので大人しく差し出す。骸は俺の手を掴むと自分のコートのポケットに押し込んだ。

「ほら、こうすれば少しはあったかいでしょう?」

こんなバカップルみたいなことなんて普段なら、絶対しない。
でも、寒かったし周りに誰もいなかったから、そのままにしといておいた。



冷たい風が吹き込んでも、ポケットの中の左手は確かに右より暖かかった。


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