マグカップが割れた月曜日



 目覚ましの音に急かされるように起こされる。
ふと見ると、隣の男はまだ眠っている。
(…こいつ、学校行く気ねぇのかよ)

 なんとなくムカついたので、鼻をつまんでみた。
起きない。
口も閉じさせてみた。
(…ごじゅはち、ごじゅくー、ろくじゅ、ろくじゅいーち、ろくじゅ…)
100まで数えて、馬鹿馬鹿しくなってやめる。

 そうこうしているうちにようやく頭が働いてきて、部屋から美味しそうな匂いがしていることに気付いた。
ふすまを開けて、居間もかねている6畳の部屋に入ると、折りたたみのテーブルの上に朝食が用意されていた。
トーストにソーセージ、スクランブルエッグとうさちゃんリンゴ。
高校まで母親の美味しい料理を食べていた綱吉から見れば、質素なものだが、現在一人暮らしの身としては自分で作らなくてもいいというだけで嬉しい。
(こいつも結構いいとこあんじゃん)

 起きたら少し優しくしてやってもいいかもしれない。
そう思いながら、コーヒーでも飲もうとマグカップを探す。もっとも子供舌の綱吉はブラックどころかコーヒー牛乳並みにミルクと砂糖を入れなければ飲めないのだが。
マグカップを探す。
マグカップを・・・。
(あれ?俺のマグカップ…)
 俺のマグカップ。フウ太が誕生日プレゼントにくれたマグカップ。某アライグマアニメのイラストのマグカップ。
どうしてお前はそんな姿でそんなところに…。
(むくろのやつ〜!!優しくしてやろうなんて思った俺が馬鹿だった!!)

 蹴り起こしてやろうかと思ったが、時計を見てあわてて朝食をかき込む。
そして綱吉は急いで身支度を整えて、ついでに未だに眠ってる男を踏み潰し、あわただしく出かけていった。

 残されたのは、なぜ踏まれたのか分かって居ない男とゴミ箱の中のマグカップ。


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