救いを求めた土曜日



寂しい。
寂しい。寂しい。さびしい。

「綱吉君…」

不安だった。
生きるか死ぬかの時でさえ、こんなに不安にはならなかった。
人ごみを掻き分けて、あたりをどんなに見回しても彼の姿はない。
いっそ泣き叫べたら、どんなに楽だろう。
不安で目の前が暗くなるような感じがした。



骸はずっと一人だった。
一人で生きて、一人で死んだ。
たとえ誰かと共にいても、それはおもちゃで下僕だった。
ずっと骸の世界は一人で完結していた。
だれも骸に触れなかった。
何年も、何百年も、骸の世界は閉じていた。
だから孤独を知っていると思っていた。
孤独を知っていて、その上で自分は一人が寂しくない生き物なのだと思っていた。
『骸』
でもそんなのはただの勘違いだった。
骸は孤独にいたが、孤独を知っていたわけじゃなかった。
『骸』
彼を愛して初めて、寂しいと思った。
独りは寂しい。
誰かを思って寂しくなることこそが孤独なのだ。
だから今、こんなにも大勢の人の群れにいながら、こんなにも寂しい。

「綱吉君…。どこですか…」

みんな笑っている。となりのだれかと。
駆けていく子供。見守る大人。手を繋ぐカップル。
笑う、人、ひと、ヒト。
そのどこにも彼はいない。
そのどこにも僕はいられない。

「つなよしくん、たすけてください」

もう独りではどこに行けばいいのかさえ分からない。
どうか助けて。



ピンポンパンポーン♪
「迷子のお呼び出しをいたします。六道…えっと、ほんとに読み方むくろでいいんですか。あ、はい。え〜、六道骸君、お連れ様が迷子カウンターでお待ちです。迷子カウンターまでお越しください」
パンポンピンポーン♪

「……」
救いの手は思わぬ形で伸ばされた。


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