虫の居所が悪い木曜日



 なんだかイライラするから慰めてもらおうと、骸は綱吉を待っていた。

 しばらく待っていると綱吉が骸の知らない男と一緒に歩いているのが見えた。楽しそうな様子になんだか苛つく。

(僕がこんなイライラしているのに、そんな知らない男といるなんて!)

骸の機嫌は下降する一方だったが、以前友人と居るのを邪魔して綱吉に大変怒られたのを覚えているので、我慢する。

イライライライラ。

綱吉は隣りの男と楽しそうに笑っている。

イライライライラ。

ぱし!

 その音に骸は切れた。
普段の骸なら、まだ我慢できただろう。馴れ馴れしく背中を叩いた男に眉をしかめても、綱吉が気にしていないようだったら許容できた。
しかし今日の骸は非常に機嫌が悪かった。
感情が望むままに男を殴りつけ気を失わせた。本当はもっと痛めつけたかったが、微かに残った理性がそれはまずいと告げていたので、それだけで済ます。

 それなのにちゃんと我慢したのに綱吉に叱られた。
イライラして細くなった神経は綱吉にさえ怒りを向けさせる。

「そんなの知ったこっちゃないです!!だってこいつなんかが綱吉君と居るなんて駄目です。許せません。どうして、どうして僕だけじゃ駄目なんですか。僕だけでいいじゃないですか・・・!僕は綱吉君だけでいいのに。僕には貴方だけなのに。他のやつなんて要らないのに!どうして綱吉君はそうなんですか!!僕が居るのに!ひどいです!!そんなやつと話さないでください!そんなやつに笑わないでください!」

「むくろ」

「要らないんです。全部。全部!消えてしまえば、消してしまえばいいんですか。僕と綱吉君以外の全部。そうすれば僕だけを必要としてくれますか。僕が…、僕を愛してくれますか。貴方はいつだってそうだ!決して僕を一番に愛してはくれない!なんで…。僕にはもう他にはないのに。なんでですか。なんで!なんで!なんで!!」

「いい加減にしろよ、骸」

言い過ぎた。

 苛立った綱吉の声で一気に正気に戻る。
どうしよう。嫌われてしまっただろうか。綱吉君に嫌われたら生きていけないのに。
泣きそうになりながら、綱吉を見る。

「はぁ。骸、こいつどうにかするから、プリン買って家で待ってろ」

プリンは骸の好物だ。
つまりは許してくれたのだろう。
安堵と共にお腹がすいてきた。
だから骸は友人らしい男を担いで歩いていく綱吉に尋ねた。



「綱吉君は、プリン何がいいですか」


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