予期せぬ雨に打たれた水曜日



駅前で待っていたら、雨が降ってきた。
約束の時間まであと30分。
傘を持ってなかったし、それほど強くなかったのでそのまま待ってみた。

(まったく石原良○は何をやっているんでしょう…!!)
別に骸が見た予報は彼の番組ではなかったが、責任を押し付けてみる。その他に天気予報士の名を知らないだけなのだが、有名税と思って大人しく呪われて欲しい。

(ああ!それにしても、綱吉君とデートなんて久しぶりです。一応リサーチしておきましたがどこにいきましょう!まぁ、綱吉君と一緒ならどこだっていいんですけど!)
きゃ☆と言いながら身をくねらせる男はどこからどう見ても変人だった。
周りに人が居ないのは雨のせいだけではあるまい。



約束の時間まであと15分。
だいぶ雨もつよくなってきた。すでにしっとりでは済まない程度には濡れている。
(どうしましょう。綱吉君と待ち合わせしたのは此処なんですが、屋根のある場所で待ってましょうか。1時間かけてセットした髪も濡れてしまいますし・・・)
湿気てぺちゃんとなった髪を少し撫でてみる。
(あぁ!でも、雨の中待ってるのもいいかもしれません!なんか健気な感じで。綱吉君そういうのに弱いですし。「こんなになるまで俺のことを待っててくれたのか」なんて!)
くふふふふ…。
不気味な笑い声に、逆ナンしようとしていたお姉さんが逃げた。



そして約束の時間。
辺りをきょろきょろと見回してみるが綱吉がくる様子はない。
少し寒くなってきた。



約束の時間から30分後。
(くふふふふ・・・。綱吉君まだでしょうか。今日は映画に行こうかと思いましたが、思いのほか濡れてしまいましたし、別のところのほうがいいかもしれませんねぇ。最近、隣町にできたスパとかがいいですかね。綱吉君も行ってみたいって言ってましたし)
駅前を歩く人の手にはみんな傘があり、不審そうな目でびしょぬれの骸をちらちらと見ている。



約束の時間から2時間後。
「くしゅん!!」
うなりながら鼻をかんだが、ティッシュもびしょぬれであまり気持ちのいいものではない。
骸はもはや着衣水泳でも行ったのかと思われるほど濡れていた。夏でもないのにそんなに雨に打たれれば、そりゃ寒い。骸は歯をがちがちと鳴らしながら、何度目かも分からない携帯の話し中の音に舌打ちをした。
(綱吉君、もしかして忘れちゃってるんでしょうか。でも、昨日ちゃんと念押しましたし・・・。もう少し、もう少しだけ待ってみましょう)
雨が嘲笑うようにざぁっと音を立てた。



その後、骸は千種に強制的に連れて帰られるまで3時間待ち続け、当然風邪をひいた。
それでも、綱吉が見舞いに来れば幸せそうなのだから、どうしようもない。


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